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江戸東京重ね地図

東京の現代と江戸時代の地図を、同時に重ね合わせて表示することができるパソコンソフトです。身近な場所が江戸時代にはどのようになっていたかを一目で確認できます。江戸の地図は、区分地図である江戸切絵図をつなげたものではなく、明治初期の実測図から地形を復元し、その図に江戸時代(1856(安政3)年現在)のデータを盛り込んだものです。そのため、江戸の地図と現在の地図が完全に一致します。

これを見ているといろいろな発見ができます。渋谷駅の周辺が「渋谷村」という農村で田や畑が広がっていたことなど、現代からは想像もできません。その一方で、江戸時代の道路の位置が現代もそのままになっている場所が多いのに驚きます。都市計画がうまく行かなかった証拠とも言えますが、それだけ歴史のある街並みが残っていることに感謝すべきなのかもしれません。

東京は大都会ではありますが、公園などの緑が多い都市です。そうした緑地帯の多くが大名の屋敷跡であることもわかります。たとえば日比谷公園は、長州藩毛利家や佐賀藩鍋島家を始めとする大名の上屋敷の跡です。またそれ以外にも、大学や大規模な建造物は大名の屋敷跡であることが少なくありません。上智大学は尾張徳川家の下屋敷跡で、六本木ヒルズは長州藩の支藩の一つである府中藩(長府藩)毛利家の上屋敷跡です。
このように、現在の東京と江戸を行ったり来たりして楽しめるのがこのソフトです。

江戸東京重ね地図は、『検索版』『超拡大縮小版』『細見一式』と3種類の地図が販売されています。『検索版』は一番最初に販売されたもので、地名などから地図を検索することができます。『超拡大縮小版』は江戸全体図から詳細図までズームして表示できます。『細見一式』は『検索版』と『超拡大縮小版』の2枚がセットになったものです。さらに、江戸時代・明治時代・現代の地図を見比べることのできる『江戸明治東京重ね地図』もあります。

『細見一式』と『江戸明治東京重ね地図』を使ってみました。
『細見一式』は公式にはXPまでの対応ですが、私の環境では『検索版』『超拡大縮小版』ともにWindows7で問題なく作動しています。『江戸明治東京重ね地図』は公式にWindows2000・XP・Vista・7に対応しています。

検索版

地名のほか、寺院、大名の名前、有名な料理店や蛍の名所、行楽地、さらには岡場所の検索などもできます。「鬼平犯科帳検索」というのもあり、池波正太郎の『鬼平犯科帳』に出てくる舞台を検索することも可能です。逆に、地図上で右クリックするとその地点の情報を得ることができます。
拡大・縮小はスクロールバーで1:2000から1:4000(縮尺は単なる目安で、正確な縮尺は環境によって異なります)まで無段階にできます。同様に、スクロールバーで江戸から現代まで無段階に地図を重ね合わせることが可能です。双方の表示の濃さは自由に選べ、たとえば江戸時代の地図を濃く表示させて現代の地図はごくかすかに表示させるといったこともできます(もちろんその逆も可能)。また、地図の場所に対応する切絵図の写真も表示できます。なお、移動は掴みスクロールです。
掲載範囲は切絵図よりかなり広く、朱引内(幕府が定めた江戸市中の範囲)すべてと、さらに一部はその外側まで含まれています。たとえば西側は中野駅周辺まで掲載されていますが、江戸時代の地図では一面田や畑です。そのほか、犯罪者の市中引廻順路なども載っています。
ただ、拡大や縮小をすると文字が読みにくくなるのが若干気になります

超拡大縮小版

拡大・縮小は1:2000から1:10万までの六段階で、左クリックが拡大、右クリックが縮小です。
江戸から現代への変化は四段階です。地図の濃度でいうと、現代0:江戸3、現代1:江戸2、現代2:江戸1、現代3:江戸0といった感じです。これはやはり検索版のように無段階で変化できる方が便利でしょう。掴みスクロールだけでなく、カーソルキーでも移動できるようになっている点や、ホイールの回転でも拡大・縮小できるところなどは改良の跡が見られます。なお、拡大しても文字ははっきりしています。ただし地図の掲載範囲は検索版より狭く、品川などは範囲外です。
なおWindows7の場合、管理者権限でないと実行できません。

江戸明治東京重ね地図

拡大・縮小は1:2000から1:32000の五段階で、『検索版』とは異なり、最大限に拡大しても文字ははっきり読めます。また江戸・明治、江戸・現代、明治・現代の間で、無段階で重ね合わせることが可能です。

基本的な機能は『検索版』と同じですが、さらに改良が加えられています。現代・明治の地図でも、地名等による検索が可能になりました。また切絵図の他、各所の写真と版画も収録されています。収録範囲も『検索版』より広くなりました。起動が速くなったのも歓迎できます。

明治の地図は、1907年(明治40年)前後のデータを利用しています。「~邸」として、華族・実業家・官吏等の邸宅が載っており、邸宅を人名で検索することも可能です。また、寄席・料理屋・企業なども掲載されています。

まとめ

『検索版』と『超拡大縮小版』にはそれぞれ一長一短があります。2枚セットの『細見一式』を買うのも一つの手ですが、2つのソフトを使い分けるのはやや面倒なので、大幅な拡大縮小と検索が同時にでき、さらに明治の地図も見ることができる『江戸明治東京重ね地図』が一番便利だと思います。また、現在販売されている『江戸明治東京重ね地図』には、『超拡大縮小版』も同梱されているので、今あえて『細見一式』を買う理由は見当たりません。
なお『江戸明治東京重ね地図』は東京都立中央図書館1階の都市・東京情報コーナーで利用することができます。また、都内の区立・市立図書館で所蔵しているところもありますので、試してみたい方は近所の図書館のOPACで検索してみることをおすすめします。
この地図をインストールしたノートパソコンを持って東京の街を歩くのも面白そうですね。

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江戸東京重ね地図 検索版
江戸東京重ね地図 細見一式
江戸明治東京重ね地図
始めに販売された製品で、地名等のデータブックが付属していますが、現在では新品は入手できないようです。
三層江戸明治東京重ね地図
江戸東京重ね地図の超拡大縮小版も付属しています。価格は安くなっていますが、データブックは含まれません。

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最終更新日:2015/3/2
公開日:2008/12/4