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オリエンテーリングとオリエンテーション

地図とコンパスを使って山野を駆ける「オリエンテーリング」というスポーツがあります。一方、大学で新入生を対象にカリキュラムなどの説明をしたり、新入社員に会社のルールを教えたりするのは「オリエンテーション」です。この二つを間違えたという笑い話がありますが、間違えるのも無理はない話で、もともと語源は同じです。

この二つの単語の語源は、いずれも「orient」です。「起きる」「立ち上がる」などの意味を持つラテン語「oriri」の現在分詞「oriens」が、「太陽が起き上がる場所」すなわち「東」という意味を持つようになり、さらに「東洋」を意味するようになりました。これが「orient」に変化し、フランス語を経て英語に入ったのです。動詞としては、「東向きにする」という意味から転じて「ある方向に置く」「方向付ける」、さらには「適応させる」という意味を持つようになりました。この「orient」の名詞形が「orientation」です。

オリエンテーリングはスウェーデンで生まれたスポーツで、この言葉もスウェーデン語から来ていますが、語源は英語の「orient」と同じです。ちなみにスウェーデン語でオリエンテーリングは「orientering」、オリエンテーションは「orienterings-kurs」です。語源が同じということがよくわかります。

普通地図の上は北ですが、実際に使う時には、自分の進行方向を上にした方が読みやすいものです。このように、地図の上下を実際の向きに合わせて回転させることも「orient」です。あるいは、地図の北をコンパスの指す向きと合わせるのも「orient」です。元の意味に近い用法では「教会を祭壇が東になるように建てる」という意味もあります。北と東の違いはありますが、どちらにしても「向きを合わせる」という点では同じ意味を持つことになります。

参考文献:松野道男『英和辞典にない語源情報』南雲堂

最終更新日:2012/12/5
公開日:2012/6/24