地図趣味のすすめ

地図趣味のすすめtop >地図帳・地図本の紹介 >地図の読み方

地図の読み方

地形図の読み方・歩き方

「標高0メートルから山岳まで」という副題の通り、町歩きから山までをカバーした本です。東京都の東端(旧江戸川の堤防)から西端(雲取山)まで、二万五千分の一地図を頼りに歩いた結果をまとめています。著者は実際に雲取山の頂上まで足を運んでおり、全部歩くのに半年かかったそうです。

実際の風景のカラー写真がふんだんに使われており、地図上の位置と対比されています。基本は二万五千分の一ですが、一部には一万分の一地図も使われています。また場所によっては、昔の地図との比較もあります。これを読むと、東京の地形が実に変化に富んでいることがよくわかります。

登山の際の地形図の読み方に関する本はよくありますが、この本はそうした本とは一線を画しています。実際の町歩きで、25000分の1地形図を参考にして歩く人は少ないと思いますが、著者は、地形図を利用してさまざまな情報を読み取り、町の風景と照らし合わせています。都心部の地形図は、一面建物や建物密集地の記号で覆われており、等高線はあまり目立ちません。そういうこともあって、都心の等高線を気にする人は少ないでしょうが、著者は等高線や水準点に細かく目を配り、都市の地形を明らかにしていきます。

地図で「脳内旅行」を楽しむという人はよくいますが、これは、脳内旅行を実際の旅行に転換するための手がかりとなる本です。ただ、地図そのものに関する説明はあまりなく、ややガイドブック的な印象です。

東京の町歩きを想定した本ですが、地図の基本的な見方と、地図と実際の風景の対比の仕方が詳しく記されているため、他の地域に住む人でも参考になると思います。ただ、やはり実際に現地に足を運んでみた方が、この本の理解は早いでしょう。

地図の「読み方」術

『子供の科学』サイエンスブックスのシリーズです。想定する読者は小学生から中学生というところでしょうか。本文の漢字にはすべてルビが振ってあります。『地形図の読み方・歩き方』と同じ著者の本です。出版社が同じということもあり、内容は『地形図の読み方・歩き方』とやや重なるところもあります。

前半の、地図と実際の風景を見比べるというコンセプトは、『地形図の読み方・歩き方』と同じです。使用されているのは2万5千分の1と1万分の1地形図で、横浜は海辺、鎌倉は町歩き、箱根は山道といったように、それぞれの地域の特性を示した地図が取り上げられています。後半は三角点・水準点の説明や地図記号など、一般的な地形図に関する記事です。

地図の読み方に関する子供向けの本は少ないので、貴重です。

地図読み人になろう

国土地理院OBの山岡光治氏の著書です。山岡氏には、他にも『地図に訊け!』などの著書があります。
実際に二万五千分の一、一万分の一地形図を持って町を歩くことを想定した本です。大井川の蛇行の俯瞰、津山城下の街道、目白の崖道など、あるテーマの元にいくつかのコースを実際に歩いた結果が、地図とカラー写真とともに紹介されています。町歩きが中心で、山歩きは対象ではありません。

街歩きについては『地形図の読み方・歩き方』とややかぶる内容ですが、地図を読むコツが詳しく紹介されているのがこの本の特徴です。真上から見た地図と、実際に目に映る風景との違いなど、かなり実践的な知識が身につきます。街歩きの話だけではなく、コンパスの使い方や、地図記号や三角点、整置、等高線の意味など、地図全般についての記事も豊富です。専門家だけあって、このあたりの説明は実に詳細です。

ただ、『地形図の読み方・歩き方』にも言えることですが、単純な街歩きなら、何も地形図を使うことだけにこだわる必要はないという気もします。地形を知るためには地形図は必須ですが、わざわざ無理をして地形図だけを頼りに町を歩かなくても、地形図と普通の道路地図を併用すればいいだけの話です。むしろ、民間の道路地図と国土地理院の地形図との比較といった視点も面白いのではないでしょうか。
とはいえ、「地形図だけを頼りに街を歩く」というストイックさも、それはそれで一つの美学なのかも知れません。

細かい話ですが、渋谷の「キャットストリート」が「キャッツストリート」になっているのは少し気になりました。

地図を読む

「自然景観の読み方」というシリーズの一冊です。砂丘、サンゴ礁、干潟、山岳など、日本全国のさまざまな地形について、地図を通じてその特徴を読み取るという内容です。巻頭のカラーページをのぞき、地図はすべて白黒で、25000分の1地図が中心ですが、一部10000分の1も使われています。

各地の地図に加え、ステレオ空中写真も掲載されています。両者を比較することで、地形がより理解しやすくなっています。特に秋吉台のカルスト地形は、ステレオ空中写真で見ると地表の凹凸がよく分かります。

一部の地は、著者が実際に現地に足を運んでいます。現地の風景と地図との比較もありますが、ガイドブック的に使うにはやや中途半端な内容です。地図の読み方に関する本には、大きく分けて登山用、街歩き用、地理の勉強用の三つがありますが、この本は地理の勉強用と言えるでしょう。そうした本としては一般的、かつ基本的な内容なのでしょうが、教科書的なところがやはり気になります。地図趣味的には今ひとつという印象です。

地図の読み方事典

地図から自然と歴史を読み取るという内容です。地図の基礎知識、歴史についてもふれられています。タイトルには「事典」とありますが、項目別にまとめられた本ではありません。

現地を歩くことを想定した本ではなく、これも勉強本のカテゴリーです。50000分の1や25000分の1地形図だけでなく、土地条件図、昔の地図帳、古地図と、掲載されている地図がバラエティに富んでいるため、内容は専門的ですが、見ていて楽しい本となっています。日本だけでなく外国の地図も取り上げられていますが、外国の地図は非常にカラフルなものが目立ちます。特に、スイスの山岳地図は実に美しい仕上がりです。

扇状地、カルデラの地図などは他の本でも見られ、特に目新しいところはないのですが、地理だけでなく、歴史も取り上げているのがポイントです。たとえば賤ヶ岳の戦いについては、地形図上に武将の配置図が記されており、地形を利用してどのように戦闘が行われたが一目で分かります。旧版地図もふんだんに使用されています。個人的には、東京湾の海堡(海上の砲台)の地図の変遷などは非常に興味深いものです。

地図の読み方に関する本では、外国の地図を取り上げたものは比較的少ないので、日本の地図と外国の地図の比較という観点からも興味深い内容となっています。地図趣味的には、『地図を読む』よりもこちらの方がおすすめです。

地図帳・地図本の紹介に戻る

最終更新日:2011/5/23
公開日:2011/1/10